失踪宣告の取り消しについて

長年、行方不明だったお父さんが失踪宣告されて、
お父さん個人名義だったたくさんの財産も奥さんやお子さんたちにも相続され、奥さんも再婚しました。

残された家族だったけど、
それぞれが前を向いて新しい生活を歩んでいた頃でした。

突然、お父さんがひょっこり帰ってきました。10年ぶりです。
お父さんは生きていたんですね。

みんな、うれしいというより、驚きと戸惑いです。
それは、そうでしょう。

ある日突然消えておいて、そこから10年間も音沙汰なし。
そして、突然の帰還です。

お父さんは死んだものとみなされ、財産は相続され、
何より、奥さんは再婚しています。

うれしさよりも、驚きと戸惑い。気持ちはわかります。

このような場合、宣告された失踪宣告はどうなるのでしょう。
失踪宣告は取り消すことができます。
取り消すことができるというだけで、取り消さないこともできます。

その場合は、お父さんは、
もとの住所においては死亡したものとみなされていますから、
そこでの住所では法律関係はチャラになっています。

が、よそでは普通に生きていくことができます。

まあ、そういってしまっては元も子もないので、
失踪宣告の取り消しについてお話します。

失踪宣告の取り消しは、本人又は利害関係人の請求によって、
家裁で審判されます。

この場合で言えば、本人が実際に出てきたんですから、
本人であるという証明ができれば取り消しになるでしょう。

取り消しになれば、身分上、財産上の法律関係はすべて復活して、失踪宣告はなかったことになります。

もっと具体的に言えば、相続された財産は、相続されなかったことになり、
お父さんは、再婚してしまった奥さんの配偶者のままになります。

ここで問題が出てきます。
相続した財産は、すでに目減りしていることだろうし、
再婚相手がいながらいまだ配偶者という問題はどうすればいいのでしょうか。

財産に関しては、被相続人は、現存利益の返還といって残っている財産を返還すれば足りるとされています。ただし、失踪宣告されたにもかかわらず、お父さんは実は生きていると知っていた場合、利息をつけて全額返還しなければなりません。

奥さんの再婚の場合はどうか。
こちらは、基本的には前婚は復活しません。再婚は有効です。
しかし、奥さんと再婚相手の双方あるいは片方が、
お父さんは実は生きていたことを知っていた場合、前婚は復活します。
つまり、重婚状態となります。

日本の法律では重婚は認められていません(民法732条)ので、
どちらかの結婚を解消しなければなりません。